映画「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」を六本木で見た

 もう先週のことになるが、「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」を友人二人と見に行った。一年前から楽しみにしていたから、当然初日に行くつもりだったんだけど、風邪をひいてしまって出遅れた。

 応援する気持ちがにじみ出るというのは、すごい快感だったんだな。

 Anvilが83年に中野でやったときも、映画の最初の方に出てきたスーパーロック’84でも見たけれども、ラウドパークは2回とも見逃してしまったとはなんという不覚。

 日本は観客の反応が素晴らしい、とよく外国人ミュージシャンが言う。おおかた社交辞令だろうけど、この映画でそれが確かに存在することを、自分の体験みたいに実感できた。

 LIPS(Vo, G)が思い描く「ロックスター」は、お金に困らずアルバムを作り、ちゃんとしたマネージメントのもとでツアーに出られるはず。それはまだ実現されていないだろうが、ライヴでは大観衆に歓迎され、この映画でメタルに無関心な人にも広く名前を知られることになった。ある意味ハッピーエンドだけど、その後も続くのが人生なのだな。

 LIPSとロブ・ライナー(Ds)の、ケンカしながらも四半世紀以上にわたる友情や、二人を見守る姉や妻たちの現実的ながらもおおらかな眼差し。そういうところには安心する。生活のためにLIPSは学校給食を配送する運転手を、ロブは建築の仕事をしているらしい。アルバム制作の費用のために、ファンが作ってくれたお金儲けの機会として、LIPSは友達トークで物を買わせる電話セールスを一応はやってみた。「自分にはできない」という。ドラムセットの絵を描いたロブは、自分の人生が終わっても絵は残ると考えていた。無邪気で明るいLIPSと、哲学者のようなロブ。二人とも、手先は器用だが生き方は不器用そのもの。

 ちなみに84年頃の、LIPSとロブ以外はどうしているのかと思ったら、Ian Dickson(B)はモデラーになっていた。

 80年代に音楽業界の片隅にいて、同じような嗜好や目的意識をもった人はたくさん見ていた。激しい音楽が好きで、才能にも恵まれているんだけど、善良すぎて、攻撃的な歌詞を作るのに困る傾向はあった気がする。おばさんたちが顔をしかめる前で、アナウンサーみたいな女性に卑猥な歌詞を朗読され、苦笑しているLIPSの気持ちがよくわかる。このままクラウザーさんのネタにもなりそうだ。

 日本での知名度がAnvilとあまり違わない(と思われる)Twisted Sisterは、大きいレコード会社と契約してヒット曲も出て、お金持ちになった。社会への不満を歌詞にしようとして、プール付きの庭でとまどっていると、「ヘヴィ・メタル・ラウダー・ザン・ライフ」でディー・スナイダーは言っていた。ディーとLIPSには、ショウマンとしてバカかつ大胆なことをやらねば、しかもそれを楽しまなければという義務感が共通しているように思う。

 ミュージシャンでもお笑い芸人でも、生活のためにバイトなどしながら、40代50代まで続けているというのは、実話として珍しい話ではない。80年代前半というと、ABCお笑い新人グランプリで82年宮川大助・花子、83年トミーズ、84年ダウンタウン。そして85年はちゃらんぽらん。だけどわしが冨吉さんをテレビで見たのは、「エグザイル、知らんわ~」の最近になってからだ。

 この映画はじんわり温かい。いろんな思いが交錯する。Chris Tsangaridesさんも壮健そうでなによりだ。同じコンセプトでほかのバンドを扱っても、面白い映画ができるかも。たとえばパガニーニの子孫のMarco Paganini(Vo)がやってるPaganiniとか。日本のバンドのドキュメンタリーも作られないかなあ。

 売れるのはいいことだ。やりたい形のライヴなり、表現活動をするのに、知名度があれば幅が広がる。でも、好きな創作をやり続けられるのが一番の幸せだ。

 その幸せが自分にあるのか、というとまた別の話になるからやめておくが、今はこの映画の成功を、Anvilのために喜んでいるだけ。先週土曜日の六本木は、満席ではないけどずいぶん人が入っていた。公開期間は延長を重ねている。六本木ヒルズでは少なくとも19日まで(最初は夜~深夜しかなかったのが、昼間もやるようになった。スケジュールは日々違うらしい)。吉祥寺バウスシアターは中旬までの予定だったのが、11/27(金)までは11:40/13:30/15:20/17:10/19:00、11/28(土)以降=レイトショー(時間未定)、終了日未定になってる。地方では来年からの公開を決めた映画館もいくつもあるようだ。

 わしの学生時代のバンドのメンバーは、郵便局員や消防隊員として働きながら、今でも趣味でやり続けてたまにライヴハウスに出ているとのこと。何度か誘われたけど、わしはもう何も弾けそうもないとあきらめて、ことわったのを後悔してる。「強力なキーボード」が入ったらしいから次は見に行かないとな。

 楽器はまたやり始めるぞ。ほぼ初心者からの再スタートだけど。元上司がバンドを始めるそうなので、混ぜてもらえるくらいにはなりたい。

以下メモ
●シルシルミシルでもやってたんですな!

●サーシャ・ガバシさんドラムうまい

Comments

  1. つかのま より:

    この映画は19日に吉祥寺で飲み会があるので、
    その前に一人で見に行く予定。
    「パイレーツ・ロック」と「僕らのワンダフルデイズ」も見たい。
    「こまどり姉妹がやって来るヤア!ヤア!ヤア!」も見たかったのだが終わってしまったかな。
    バンドは、どうメンバーをそろえるか試行錯誤中です。
    まあボチボチやります。

  2. Nsk より:

    この秋は音楽関係の映画(・演劇)が豊作だったのですね。
    マイケル・ジャクソンのも劇場で見ておきたいし…。
    こまどり姉妹はテアトル新宿で11/27(金)までやってるそうです。

    ドラマーはやっぱりメンバー募集掲示板とかじゃないと見つからないでしょうかね。
    リズムマシン(って今言わないのかな?)を使うより、ヘタでも人間が叩いたほうがいいと聞いたので、何をやっても初心者スタートに戻ってるなら挑戦してみるべきかな?とも思ったりしております。

  3. つかのま より:

    昨日11/19、吉祥寺バウスシアターで17:10の回を観てきた。
    メタルグループのドキュメントが、淡々と、演奏風景を誇張することもなく綴られたいい映画だった。少し泣けた。
    この回の観客、約10人。
    ガアガア音を立てて暖気を入れる古い大型エアコンが客席脇で動いていたが、音響が大きい映画のせいか、観賞を妨げるものではなかった。
    このレトロな映画館は、エントランス(場内売り場)の雰囲気といい、昭和40年代の映画館を思い起こさせる私の年齢にふさわしい場所だった。マイカルとかの近代映画館と比べても私は、こっちのほうが好きだ。歳かね。
    「こまどり姉妹」は、現在、テアトル新宿で上映中だが朝10:00からの1回上映のみだ。これを観るには、都下在住の私は会社通勤者と一緒に朝8時の満員電車に乗らなくてはならん。
    が来年の1月からは、バウスシアターで上映するらしいから、ここで、夕方から観たほうが100倍楽しく観られそうな気がする。この「こまどり姉妹」は、高田渡の映画を作ったアルタミラの製作なので、「アンヴィル」の日本版ではないだろうかとひそかに期待しているのだ。私は演歌も好きな世代なのだ。
    「浜やん」という八丈&沖縄料理の呑み屋で、昨日、映画のあと盛り上がった。安くてうまかった。沖縄出身でそのあと八丈島に渡ったというご主人の人の良さも気に入った。映画→呑み屋。この順番がよさそうだ。

  4. Nsk より:

    つかのまさんも見てこられたのですね。
    レトロな映画館といえば、学生時代に「こりゃ遅刻だ」ってときには
    よく乗り換え駅の高田馬場付近の名画座に行ったな~と思い出しました。
    もうなくなっちゃいましたが…。
    ツェッペリンの「永遠の詩」のときは新宿で、裸のポスターだらけのうらぶれた映画館だったな~。
    バウスシアターにはまだ行ったことないですが、すごく雰囲気がよさそうですね。

    六本木は食べ物屋が集中しているので、友人と行ったら、食(テンイッポウで麻婆土鍋ごはん)→コーヒー&チョコレート→映画→コーヒー(マクドナルド無料カフェ)→食(東京純豆腐で韓国豆腐鍋スンドゥブ)、となってしまいました。映画館にはあこがれの山盛りポップコーンがあったんですがさすがに無理でした。

    以前の演劇(クイーンの)→呑み屋もよかったですね!

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